アニムス総論 / Xenosaga
アニムスの構造
アニムスは作中では人の姿を取り、キャラクタープレイヤーの一人「KOS-MOS」として登場する。ただしこれは物語の舞台となるTC4760年代のことで、AD40年頃まではイエス・キリストの妻「マグダラのマリア」として存在していた。
古代ロストエルサレム時代、アニムス=マリアは三つの要素で構成されていた。
古代ロストエルサレム時代のアニムスの構造
1.虚数領域=集合的無意識内のアニムスの意識・心(AD40年頃に集合的無意識内に四散)
2.実数領域の肉体(他人から「マリア」と定義されていた姿、実在しない)
3.アニムスの能力と力(AD40年頃に集合的無意識内に四散)←これが本体
これに対し、TC4760年頃のアニムス=KOS-MOSを構成する要素は以下である。
TC4760年頃のアニムスの構造
1'.虚数領域=集合的無意識内のアニムスの意識・心(四散したものを集め再統合した)
2'.実数領域のKOS-MOSの躯体(実在する)
3'.アニムスの能力(四散したものを集め再統合した)←これが本体
1と3および1'と3'は、ほぼ不可分で同一のものである。また1'と3'は作中ではほぼ未起動状態にあり、特定の条件が揃わなければ起動しない。
1'と3'はAD40年頃に失われたものを回収および再統合し、TC4765年(アーキタイプ事故)の時点で既にKOS-MOSに移植済みである。だが再統合されたマリアの意識は、マリアの記憶を持った新たな人格、つまりKOS-MOSの意識に変化している。なお1'3'ともにゲーム開始時は未起動だが、ゲームの終盤で完全に起動し、最後はKOS-MOSの意思で3'をネピリムに委譲している。
アニムスが持つ三つの機能
アニムスの存在意義は宇宙集合体の保護である。通常時は観測行為抑制システムとして機能するが、フェイルセイフ発動が確定した場合は、アニマによる次元宇宙の消去を補佐することで次元宇宙の崩壊を回避する。つまりアニムスは、次元宇宙の崩壊を回避することで宇宙集合体を保護するシステムである。
また、アニムスは単独で機能することはほとんど無く、観測行為のコントロールやフェイルセイフの補佐のように、基本的にアニマが機能する際に連動してそれを補佐するシステムとして運用される。
アニムスは宇宙集合体を守るため、三つの機能を有している。
A.観測行為の調節
通常時のアニムスは、トラブル発生に伴う観測行為を抑制的にコントロールすることでエネルギー流入や意識の散逸を最低限に抑え、次元宇宙の崩壊を遅延させる。遅延させることで崩壊を回避するのである。
B.フェイルセイフ補佐(いちばん重要)
アニマがフェイルセイフを実行する際、アニムスは上位領域からの指示ではなく、アニマからの要請を受けてこれを補佐する。
C.エントロピー減少
アニムスは次元宇宙のすべての事象のエントロピーを減少させる力(散らかったものを整理整頓する力)を持つ。作中データベースでは「力を秩序立てる力」とあり、Ep.1でKOS-MOSが大量のグノーシスを吸収した場面がこれに該当する。
また、フェイルセイフの補佐もこの力を利用する。アニマはエントロピーを増大させる力を用いてフェイルセイフを実行するが、アニマ単独では無秩序な意識の散逸をも招き次元宇宙が崩壊してしまうため、アニマのエントロピー増大の力をアニムスのエントロピー減少の力でコントロールし、宇宙を秩序立った消去へと導くのである。
アニムスはアニマと対のシステムなので、基本原理はアニマとほとんど同じである。つまりBとCはウ・ドゥに意志(エネルギーくれ)を伝達して観測行為を誘発し、受け取ったエネルギーを利用する。Ep.3のケビンの台詞「KOS-MOSが力を使うたびにシオンの寿命が縮む」は、アニムス=KOS-MOSがこの力を行使する際は小規模ではあるがウ・ドゥの観測が行われるため、身近にいるシオンが影響を受けてしまうことを指している(詳細は後述)。
観測行為の調整(A)とフェイルセイフの補佐(B)は、アニムスの意志とは無関係に完全に自動で行われる。フェイルセイフを除くエントロピー減少機能(C)は、アニムスの意志に従い行使される。
またBとCの能力を行使するために必要なエネルギーの供給要請は基本監視者に対して行われるが、なんらかのトラブルが生じ監視者(部下)に接続できなかった場合は創造者(上司)へと伝達され、創造者が監視者の役目を代行する。
アニムスの仕事
A.観測行為の抑制的コントロール(自動)
B.フェイルセイフ補佐(自動)いちばん重要
C.エントロピー減少=すべてを散逸させる(手動)
これらすべては力(power)ではなく能力(ability)だが、作中では「アニムスの力」と呼ばれている。
BとCは基本は同じ力(エントロピー減少)だが、Bはアニムスの意志に関係なく発動するのに対してCがアニムス自身の意志に従い行使されるのと、規模と目的が明らかに異なることから、敢えて別項とした。
作中のアニムスは終盤まで能力と意識が未覚醒状態にあり、KOS-MOSはA〜Cのほとんどを行使できない状態にある。だがアニムスの能力と意識が一時的に覚醒した際、Cを行使している。
Aはマリアの存命中にしばしば行使されていた。Bもマリアの存命中にフェイルセイフ発動が確定したため行使されるはずだったが、このとき彼女は自らの意志でアニマを分断し、フェイルセイフ発動を防いだ。つまりアニムス本来の機能を放棄したのである。このため宇宙は消去こそ免れたが、下位領域の状況(意識が散逸しまくり)は改善されなかった。物語の舞台である次元宇宙が崩壊間近であるのはこのためである。
使用例
劇中には、アニムス=マリアの意識が覚醒し、Cの能力を行使していると思われる場面がいくつか登場する。
ex.1 Ep.IでKOS-MOSが大量のグノーシスを吸収した場面
・アニムスの意志で行われた
躯体に搭載された意識収集装置を作動させ、グノーシスを吸収した。これはコンパクトタイプのツァラトゥストラとも言える装置だが(詳細は後述)*1、KOS-MOSに搭載されているのはケビンがヨアキムの技術を用いて開発した「マリアの意識回収装置」であるため、本来ならばグノーシスは吸収しない。それにも関わらずほぼすべてのグノーシスを吸収したのは、アニムスのCの力でグノーシス=散逸する意識を強制的に収束させ、自らの内に取り込んだからである。吸収した意識がどうなったかは不明。
ex.2 Ep.1のラストで大気圏に突入したエルザをアニマ=ケイオスと共に守る場面
・アニムスの意志で行われた
増大するエルザのエントロピーを減少させることでエルザを保護した(アニマは大気との摩擦熱を他のエネルギーへと変換する(散逸させる)ことでエントロピーを増大させ、エルザとKOS-MOSを保護した)。(この解釈はかなり素人によるこじつけ感が強いのであまり突っ込まないで下さい)
ex.3 Ep.3のラストで全ての散逸する意識たちをロストエルサレムへと導いた場面
・マリアからアニムスの力を譲渡されたネピリムの意志で行われた
ツァラトゥストラが集めた意識だけでなく*2、星団中に発生したグノーシスたちを強制的に収束させ、ex.1同様自らの内に取り込んだ。
cf.「わが揺りかごに集いし意識たちよ 全ての始まりの場所 原初なる地へ」
アニムスの力
アニムスの特徴として、A〜Cすべてが結果的に何かしらを収束させている。Aは観測行為を抑制することで散逸する意識を収束させ、Bはアニマのエントロピー増大能力をコントロールすることで散逸する次元宇宙を収束させ(最終的には消去へと導く)、Cはすべての事象のエントロピーを減少させることで様々なものを収束させる。以上のことから、アニムスの力はA〜Cをまとめて「収束の力」と呼ばれている。
アニムスは物語の舞台となったTC4760年代には意識と力が休眠状態にあり、シオンが目覚めさせたときにだけ覚醒し(意図的に目覚めさせたのではなく、シオン自身が危機に陥った際にアニムスが自主的に覚醒した)、Cの力を行使している。覚醒時はKOS-MOSの瞳は青くなるので判別は容易である。
前述のex.1〜3に加え、Ep.2でヴォイジャーに襲撃されたシオンを守るために起動し、ディナと合体した際や、Ep.3序盤でT-elosに破壊された直後にも瞳の色は変化している。これらにおいては明らかな収束を思わせる描写はないが、アンドロイドとしてのKOS-MOSの力だけでなく、何らかの形でCの力を行使していたと思われる。
補足
*1*2ツァラトゥストラが収集するのは、観測行為由来の後天性グノーシスのみである。ツァラトゥストラはメルカバーの推進燃料を集める装置であり、観測由来グノーシスが含有するウ・ドゥの波動を収集・抽出することで推進力を確保する。ツァラトゥストラを参考に造られたネピリムの歌声装置は、ヨアキムによって散逸した意識以外も吸収する(目的とする波形を持つ意識=サクラの意識を特定・回収)よう改良されている。彼の助手を務めていたケビンは四散したマリアの意識を回収するため、この技術を応用した意識回収装置を開発し、KOS-MOSに搭載した。
アニムスの覚醒 / Xenosaga
概要
アニムスの役目は、観測行為を調整して散逸する意識の発生を抑制し、次元宇宙の崩壊を遅延させることである(A)。またフェイルセイフ実行の際、アニマのエントロピー増大機能がもたらす意識の散逸による宇宙の崩壊が起きないよう、アニマの力を調整する役目もある(B)。ときには自らの意志を上位領域の監視者に伝達する(エネルギーくれ)こともある(C)。この調整や伝達に必要なのが「アニムスの覚醒」である。
だがアニムスの覚醒は、アニマの覚醒とはまったく意味が異なる。
本来、アニムスは他者による覚醒を必要としない。一歩間違えれば即座に宇宙を崩壊させてしまう観測行為を確実にコントロールするため、アニムスは他者による覚醒という不確実な要素に頼ることなく、アニムスだけで完結して機能するのである。AとBが共にアニムスの意志を介在させることなく、自動で行われるのも同じ理由である。
だが、AD30年頃に存在していたアニムス=マリアは、彼女の親友だった一人の少女にアニムスの力の一部を譲渡してしまったので(後述)、これ以降アニムスは、少女の助けがないと機能できなくなってしまった。アニムスはアニマが意志を伝達すると同時に観測行為の調整を開始するが、このとき少女によるアニムスの力の起動という手順が必要になったのである。このマリアを補佐する少女が、マリアの巫女=シオンの前世である。
巫女の役割
巫女が譲渡された力は、おそらくCの一部と思われる。アニムスの意志で扱える力はCだけだからだ。しかし秩序を具現した存在であったアニムスは、力の一部を譲渡したことでアニムスそのものの秩序を失い、常に不安定な状態、つまり放って置くとエントロピーが増大し続けるという、本質とは真逆の状態に陥ってしまった。この不安定なアニムスのエントロピーを、譲渡されたCの力を用いて減少させ、アニムスを秩序立てて起動し、機能できる状態に持っていくのが巫女の役目だった。
つまりアニムスの「エントロピー減少」というCの力の一部を譲り受けた巫女が、その力を行使してアニムスを正常な状態に戻し、アニムスのAの機能を発動させるのである。だからアニムスの覚醒という表現は厳密には正しくなく、アニムスの安定化というべきである。
シオンの役割
TC4700年代になると新たな問題が生じてくる。
アニムスの意識と力(能力)はAD40年頃に崩壊し、集合的無意識内に四散してしまうのだが、TC4700年代後半、永劫回帰という目的のためにこれを回収・再統合し、アニムスの復活を試みた者たちがいた。ヴィルヘルムとその部下ケビン・ウィニコットである。
ヨアキムの技術を流用することで回収と再統合までは成功したが(別項で解説)、復活したはずのアニムスの意識は休眠状態のままで、意識とほぼ同一のものであるアニムスの力の起動も不可能だった。アニムスの力はアニマと異なり、第三者の手で行使できなかったのである。そこで彼らは「トモダチ作戦」、つまりアニムスの意識=マリアの心と深く繋がっていた人物、マリアの半身とでも言うべき存在だった巫女を利用することにした*。
もともと永劫回帰には、アニムスだけでなく巫女も必要だったため、彼らは巫女の意識も復活させていた。幸い、巫女の意識を新たな肉の器に宿らせることには成功していたので、アニムスの意識と力を固着したKOS-MOSを巫女(シオン)の傍に置き、両者を深く交流させることで、アニムスの起動つまりマリアの目覚めを促したのである。
彼らの目論見通り、KOS-MOSの中に眠っていたアニムスの意識は、巫女と深く関わっていくうちに一時的な覚醒を繰り返し、最終的には完全な覚醒に至った。これもアニマの覚醒とは意味合いが異なり、アニムス=マリアの復活というべきである。
補足
*彼らが参考にしたのはM.O.M.O.とユリの関係である。ヨアキムが製作したトランスジェニックタイプレアリエンM.O.M.O.は、天の車から回収されたのち様々な手段で起動が試みられたが、ことごとく失敗に終わった。だがヨアキムの妻ユリが操作したところ、すんなりと起動した。ケビンはM.O.M.O.にヨアキムとユリの娘サクラの意識が固着されていることを知っていたため、休眠状態のマリアの意識を彼女と関わりの深かった巫女、つまりシオンの手で目覚めさせようと考えた。