アニマの反応者/ Xenosaga
アニマ反応者とは 10%
アニマを覚醒させる能力を持つ者を、アニマ反応者と呼ぶ。
彼らは強い意志を持った者であり、具体的には、能動的に集合的無意識への合一を拒絶できる意識を持つ者がそれに該当する(参考)。そのような人間のうち、アニマを完全覚醒させるほど強い意志を持つ者は、攻略本等の解説で「テスタメント因子を持つ者」とも表現される(この考察では「上級アニマ反応者」と記載している)。人間以外の生命体や物質は、アニマを覚醒させるだけの強い意志は持たないという設定らしい。
アニマ反応者は以下の能力を持っている。
1. アニマを覚醒させ、固有波動を発せられるようにする(分断された器も覚醒させる)。
2. 観測行為に伴い流入したエネルギーを、自らの意志に沿う形で行使できる。
1の能力は作中で「ウ・ドゥorゾハルとの親和性が高い」と表現される。アニマの反応者でなくとも、脳の一部分が特有の構造をしていれば親和性は高くなる(シオンの母やサクラ、人間だった頃のヴォイジャーの被害者)。
このような人々は「ゾハルの民」と呼ばれる民族に多く見られ、脳波の波形がアニマの固有波動と部分的に一致する。この世界の脳波は意識波動と同じ波形を示すので、集合的無意識にある彼らの意識からは、常にアニマの固有波動が放たれていることになる。つまり意志がさほど強くなく、アニマも覚醒させられない人々が、自家製固有波動を介して自らの意志を監視者に24時間ライブ中継しているようなものだ。
彼らの意志がうっかり監視者の興味を惹いてしまうと、観測される羽目になる。おそらく観測レベルは非常に低くなるため、いきなり白化やグノーシス化することは滅多にないと思われるが、それでも意識波動は変調を来すので、精神を病んだり昏睡状態に陥ったりといった実害を被ってしまう。
だがいかなレベルや確率が低くとも、観測行為を誘発できることに変わりはない。それゆえ彼らは「ゾハルを起動させ」「ウ・ドゥと接触できる」可能性を持つ者、つまり一般人にくらべてはるかに「ゾハルやウ・ドゥとの親和性が高い」と言われるのである。
ちなみに、ウヅキ兄妹の母親はゾハルの民の血を引いている。
反応者のリスク 10%
1の能力を持っていると、監視者ウ・ドゥにストーキングされる危険がある。このような人々が人並み以上に強い意志を持つと、ウ・ドゥに話し掛けられる(観測される)ことがあるのだ。ウ・ドゥを無視したりそれ以前に気付かなかったり(兄さんやマーグリス他多数)さっさと逃げ出す人も多いが(Jr.やユーリエフ)、ウ・ドゥはさびしがり屋なうえ質問好きなので、うっかり返事をすると延々と付きまとわれてしまう。ただウ・ドゥは選り好みが激しいので、一度きりでぽいされたり(ヴォイジャー)、チラ見だけでスルーされて、結果的に助かる場合もある(教皇等多数)。
ちなみに延々と付きまとわれると、シオンのように精神を病んだり、シオンの母のように昏睡状態に陥ったりする。
エネルギーの行使 10%
上位領域にアニマを覚醒させた上級アニマ反応者の意志が伝達されると(あるいはゾハルの民のような人々の意志がアニマを介さず伝達されると)、それを感知した上位領域の監視者がゾハルを起動させ、ゾハルを介した観測行為を開始する(ゾハルの民の場合は興味を惹いたときのみチラ見観測される)。ここまでほとんどタイムラグは生じない。固有波動は距離的時間的概念のない集合的無意識に向けて放たれるからだ(後述)。
観測行為が始まると、監視者が抱いた好奇心の強さに比例して下位領域へとエネルギー(観測用波動)が流入する。反応者はそのエネルギーを、自らの意志に沿う形で利用できる(ゾハルの民は上級アニマ反応者ではないので利用できない)。これは器の場合も同様である。
ex.1 アニマと上級アニマ反応者
BC30年頃、イエスの使徒(反応者)がアニマを覚醒させて奇跡を起こす。使徒はイエスの教義をこの世界に具現させたいという意志を持っており、得られたエネルギーで奇跡を起こした。
ex.2 アニマの器と上級アニマ反応者
TC4768年にアニマの器を搭載した人型兵器E.S.を上級アニマ反応者たちが操縦している。彼らは兵器を操ることで目的を達成したいという意志を持っていたため、得られたエネルギーはE.S.の動力となった。
また詳細は不明だが、過去に木星動乱や封印者恐慌*といった事件が起きた際も、上級アニマ反応者が何らかの目的と意志を持ち、その目的のためにエネルギーを行使していたようである。
*これらはDS版の台詞にある言葉だが、このときのヴィルヘルムとケイオスの会話から察するに、上級アニマ反応者は繰り返し転生し、転生するたびにアニマの器と出会い、そして器によって悲劇的な運命をもたらされているらしい。後述する上級アニマ反応者=アニマの端末説を採ると充分あり得る話である。
ちなみに、反応者の持つ意志すべてが上位領域に伝達されるわけではない。「やべー接客中なのにトイレ行きてぇ」とか「選挙カーうるせー落選しろ!」といった、下位領域の崩壊に結びつかなさそうな意志は、アニマの裁量で弾かれる。器だとこうした意志もすべて伝達されるが、監視者の興味を惹くことはまずないので、観測行為はごくごく低レベル(テレビつけっぱなしで見てないレベル)に抑えられる。
反応者不在の観測行為 90%
アニマ反応者が不在の状態でアニマの固有波動を発した場合、観測行為は行われるが、流入したエネルギー(観測用波動)の行き場はなくなり、実数領域では天変地異が起きたりする。例外としてオメガが存在していれば、その動力となって消費される。
どちらの場合も実数領域におけるエネルギー消費の問題であり、集合的無意識における観測は普通に行われるため、無機物等の消失現象、白化現象やグノーシス現象は、観測レベルに応じた規模で普通に起きる。
アニマ反応者が不在で固有波動を発するような状況とは、一般人がレメゲトンを用いた場合である。レメゲトンには書物やプログラム等複数の種類があり、これらすべてが同様の結果をもたらす。またレメゲトンさえあれば、アニマもアニマの器も不要である。アニマ反応者がアニマや器不在の状態でレメゲトンを使用した場合は、ふつうに流入したエネルギーを自分の意志に従って行使する。
ただし前述したように、レメゲトンの詠唱や実行で発生する波動はアニマや器が発する固有波動の劣化版であるため、意志の伝達能力は大幅に低下する。伝達された意志が監視者の強い興味を惹いた場合を除き、アニマや器を用いたときと比較して、得られるエネルギー(観測用波動)はごく僅かとなる。
波動の相互伝達における距離的・時間的制約 98%
アニマ反応者が意志を持ってからエネルギーを行使するまでには、いくつもの段階を踏む必要がある。この間ほとんどタイムラグは生じない。この過程について説明するため、以下に「アニマの能力と力」より、一部改稿し再掲する。
1. アニマ反応者が意志を持つ
2. アニマが覚醒、意志を選別したうえで、上位領域に固有波動の形で伝達する。
3. ゾハルを経由して固有波動が監視者に届く
4. 伝達を受けた上位領域の監視者が観測を開始
5. ゾハルを経由して観測用波動(エネルギー)が集合的無意識に放たれる
6. 波動がアニマ反応者の意識に到達、観測開始。
7. アニマ反応者が自分に届いたエネルギーを、意志に沿う形で行使する。
アニマ反応者→アニマ
反応者がアニマを覚醒させられるかどうかは、意志と縁の強さで決まる。
反応者とアニマ(器含む)が離れすぎていると、アニマは覚醒させられない。普通に考えれば、アニマと反応者とが実数領域的に離れている場合、その間に介在する縁はさほど深くならないからである。
だがE.S.とそのパイロットといった深い縁を持っていればそのかぎりではなく、たとえ遠く離れていても、アニマは反応者の意志を感じ取ってくれる。なんだか遠恋中の恋人達のようでロマンティックである(やってることはわりとえげつないが)。
この縁は、反応者がアニマを覚醒させた回数が多いほど深くなる。
たとえば同程度の強さの同じ意志を持った同レベルのアニマ反応者が二人いて、ものすごく遠いところにアニマ(ケイオス)がいた場合、うちひとりが一度もアニマを覚醒させた経験がない者、もうひとりが一度だけアニマを覚醒させた経験を持つ者だとすると、アニマは自分とより縁の深い後者による覚醒を優先する。ちなみに後者の順位が早まるだけで、前者も覚醒させられる。
意識を持たない器状態だとそれがより顕著になる。「差をつけたら可哀相だよね」といった情緒的な配慮が一切なされないため、厳密に覚醒頻度と意志レベルだけで伝達順位が決定される。また、各器ごとに縁の強弱を判じるようになる。
たとえば同程度の強さの同じ意志を持った同レベルのアニマ反応者が二人いて、うちひとりがアシェルを100万回覚醒させたがディナを一度も覚醒させていない者、もうひとりがアシェルを0回、ディナを一度だけ覚醒させた経験を持つ者だとすると、ディナは自分とより縁の深い後者による覚醒を優先する。ご主人様だけに忠実な日本犬並のシビアさである。この場合も後者の順位が早まるだけで、前者も器を覚醒させられる。
またE.S.パイロット、すなわち上級アニマ反応者であれば、意志の強さも桁外れなので、虚数領域的に離れていても(縁が薄くても)アニマを覚醒させることができる。だが意志の強さと縁の深さによっては、覚醒させられない場合もある。完全体アニマ相手だと、意志の内容で無視されることもある。
アニマ→ゾハル→上位領域の監視者→ゾハル
アニマがゾハルを起動させる=観測行為を誘発する場合、意志の強さや縁の深さなどはまったく関与しない。アニマがどこでなにをしていようと、集合的無意識に向けて固有波動さえ発してしまえば、ゾハルは即座に起動する。
アニマは上位領域に意志を伝達するとき、上下領域を結ぶ唯一の接点であるゾハルを利用する。アニマがゾハルを通じて上位領域にエラー通知を行うと、監視者はゾハルを通じて下位領域を観測する。監視者は常に即応体制で下位領域を見張っているので(これはウ・ドゥが異常なのではなく、本来監視者とはそういうものである。ウ・ドゥは下位領域に不正アクセスを繰り返しているから異常なのだ)、意志の伝達があれば危険度に応じたスクランブルを実施、つまり上位領域的迅速=下位領域には想像もつかないほど超迅速な観測を開始する。観測はゾハルを通じて行われるので、この時点でゾハルは起動する。
ゾハルとアニマ、アニムスは、互いに連携することで下位領域の監視と管理を行っている。三者は「下位領域管理システム」という三位一体のシステムを構築しているともいえ、そうなると三者間の伝達は、システム内の閉じたやり取りと見做すことができる。これは集合的無意識に専用回線を設けているようなものであり、三者は縁や意志の強弱といった、下位領域の要素を排した相互伝達が行える。そのためアニマが固有波動を発すると、実数空間的な距離や意志と縁の強さとは無関係に、ゾハルはリアルタイムで100%起動する(ただし起動のレベルはウ・ドゥの好み*に左右される)。
*本来監視者は、リスクマネージメントを行ったうえで観測を行うかどうか判断する。だがウ・ドゥは下位領域にのめり込むあまり、伝達内容に関わらず見境なく観測を行っている。
ゾハル→アニマ反応者
ゾハルから意志の発信者=アニマ反応者へ向けて放たれる観測用波動は、集合的無意識を伝播する。上位領域成分100%の超波動を妨害できるものなど下位領域には存在しないため(アニムスは観測の巻き添えで散逸した意識を収束させるだけ)、観測用波動は減衰も途絶もせずに反応者を直撃する。もとから反応者へ宛てて発した波動なので、途中で逸れることもない(cf.「奴から逃れる事はできない」Jr.談)。そのうえ集合的無意識にはもともと距離的空間的概念がないため、ゾハルから放たれる観測用波動=上位領域のエネルギーは、リアルタイムに反応者へと到達する。
まとめ
アニマ反応者によるアニマの覚醒、アニマからゾハル、ゾハルから監視者、そして監視者からゾハル、ゾハルから反応者へと、アニマ反応者がアニマを覚醒させ、そして受け取ったエネルギーを行使するまでには、上記のように様々な波動を用いた複数の伝達が行われている。このうちタイムラグを生じたり、伝達が起きない可能性があるのは、アニマ反応者がアニマを覚醒させるという、入り口の部分だけである。それ以外の伝達はほぼ自動的(器だとフルオート)かつリアルタイムに行われるので、反応者は意志を持つのとほぼ同時にエネルギーを行使できるのである。
脱線その1 反応者の存在意義 100%
アニマ反応者、とりわけ上級アニマ反応者は、下位領域の崩壊バロメータやサンプルのようなものと考えるとわかりやすい。上位領域の監視者は、彼らがどれだけアニマを覚醒させたかで宇宙崩壊の進行度を把握するからである。
上級アニマ反応者がたびたびアニマを覚醒させるようになると、宇宙の崩壊は進行する。
アニマの覚醒は、上級アニマ反応者がアニマの心の琴線に触れるような、様々な意志を持ったということである。上級アニマ反応者がそのような意志を持つような状況とは、高度な精神活動を行う生命体が誕生し、社会を築き、人間同士(あるいは高度な知能を持った動物同士)の間で様々な精神的軋轢を生じている状態を指す。つまりアニマの覚醒に起因する観測行為が為されずとも、自発的に散逸していく意識たちが出現するようになったということであり、これは集合的無意識の自壊が始まったことを意味している。
集合的無意識は、意識のリサイクルが正常に行われていれば自壊しない。だが宇宙が壮年期から老年期に差し掛かると、生命の進化に伴いリサイクルによる均衡が保てなくなる。時間の経過と共に自発的に散逸する意識はさらに増えていき、やがて宇宙は寿命を迎え、崩壊する。つまり上級アニマ反応者によるアニマの覚醒は、この宇宙が壮年期から老年期に差しかかったことのサインである。
また、度重なる覚醒はそのまま観測行為につながり、これも宇宙の崩壊を早めてしまう。だが覚醒の度合いによって崩壊の進行度が推定できるため、完全な崩壊を迎える前のタイミングでフェイルセイフを行える。
以上のことから、上級アニマ反応者は下位領域の現状を上位領域に伝える観測端末であるともいえる。この場合、ウ・ドゥが勝手に設置した私設端末とは根本から異なり、正規のシステムに組み込まれた純正版端末となる。端末という性質を持つ以上、上級アニマ反応者の意識はゾウリムシや腕時計といった「複雑な意志を持たない」物質と対応することはなく、必ず知的生命体と対応するようになっている。
脱線その2 上級アニマ反応者の意識の由来 100%
上級アニマ反応者の意識は、死後も集合的無意識に合一しないので、理論上はいちども意識の再構成を受けていないことになる。
もし彼らの意識が宇宙誕生時から集合的無意識に存在し、それが時間の経過と共にアニマを覚醒させるようになる、と仮定するならば、上級アニマ反応者の意識はアニマやアニムス同様、宇宙誕生時に設置された「下位領域管理システム」を構成する要素、つまりアニマの端末と見做すことができる。上級アニマ反応者の意識は、下位領域にありながら極めて上位領域的な存在であるために、下位領域の法則から外れた挙動を示す(観測用波動に曝されても意識波動が変化しない等)という考え方だ。
ただし端末といっても実数領域に対応する肉体(物質)を持っているため、アニマやアニムスほど法則から外れることはない。
一方で、上級アニマ反応者の意識は、長期間にわたって意識の再構成が繰り返された結果、偶発的に生まれた可能性もある。だがこのように運を天に任せるようなシステムでは、もし上級アニマ反応者の意識が誕生しなかった場合、アニマは未覚醒のまま集合的無意識の自壊を傍観するに留まり、下位領域宇宙はフェイルセイフが成されないまま崩壊してしまう危険がある。これは上位領域、ならびに宇宙集合体にとっては、なんとしてでも避けたい事態である。
この問題を解決するには、集合的無意識にあらかじめ、宇宙誕生から一定時間が経過すると上級アニマ反応者の意識が必ず発生する仕掛けを施しておく必要がある。一例としては、体細胞の分裂回数(DNAの複製回数)を規定するテロメア遺伝子や、楽曲の複製回数を制限するプログラムの逆バージョンだ。
だが数々の優れた保守機能を有する体細胞(DNA)の複製においてでさえ、日常的に膨大なエラー(DNAコピーミスおよび失敗作排除ミスによる癌細胞の誕生等)が発生するのだから、不確実性のかたまりである「人間の心」を包含した意識波動の場合、再構成時の情報伝達ミスの発生率は飛躍的に高まるだろう。つまり上級アニマ反応者の意識が誕生しない可能性が高くなってしまう。
やはり確実性を重視すると、ここは「上級アニマ反応者の意識は宇宙誕生時から存在していた」という仮説に軍配が上がる。転生を繰り返す神に創られし戦士たち(バロメータだけど)。ロマンである。
脱線その3 なぜ下位領域が必要なのか 100%
アニマの覚醒の考察を通じて、上位領域が下位領域に対して様々な安全装置を組み込み、上位領域および宇宙集合体を何重にも保護していることがお分かり頂けたと思う。だがなぜ上位領域は、そこまで手のかかる下位領域宇宙をわざわざ創造し、管理しているのか。宇宙集合体の安定と保全が目的ならば、余計なリスク=下位領域を抱え込む必要はない。最初からつくらなければ済むことだ。
しかし矛盾しているようでいて、宇宙集合体や上位領域にとって、崩壊の危険を孕む下位領域の存在は、実は必要欠くべからざるものなのだ。
ここで宇宙集合体を、ひとつの巨大な生命体であると仮定する。
生命は常に進化し続けている。生命体である以上、進化を義務づけられていると言ってもいい。様々な偶然、あるいは必然を経て生命体は進化を遂げるが、進化が間に合わなければ環境の変化に適応できず、絶滅する危険もある。絶滅を避けるためには、常に進化を続け、多様性を獲得しなければならない。人間でいえば、いつどんな状況に陥っても生活できるよう、様々な知識や技術を身に付けておくということだ。つまり宇宙集合体も、自分の身を守るために個としての多様性を獲得するのである。
この進化は、停滞からでは生まれない。進化を促す発端、つまり偶然が起きる素地が必要となる。それがこの世界における下位領域なのである。
複数の下位領域からは、常に無数の偶然が生まれている。それはアニマによる意志の伝達であったり、作中におけるアニマの分割というアクシデントであったりと様々だが(Ep.3ラストでケイオスがヴィルヘルムに語った「宇宙の揺らぎ」もこれに該当すると思われる)、これに対応することで上位領域は進化の糸口を掴む。人間が数々の困難を乗り越えて一人前になるように、上位領域も下位領域を通じて成長する。それは環境の変化に強くなるということであり、この領域間の連鎖が宇宙集合体の多様性に繋がっていく。そして宇宙集合体は、より柔軟かつ強健な生命体へと進化していくのである。
宇宙集合体が持つ「自己保全」という、本能とほぼ同義の強固な意志は、新たな次元宇宙を誕生させる源である。同時にこの意志は、新たに誕生した次元宇宙が自らの身を傷付けることを許さない。進化に必要な偶然の余地を残しつつ、身の保全を図る。これが作中における宇宙集合体と無数の次元宇宙(物語の舞台となる上下領域を含む)の関係である。
散逸の力 / Xenosaga
概要 5%
アニマは攻略本の解説などで「散逸の力」と呼ばれることが多い。エントロピーを増大させる能力(整理整頓されたものを散らかす力)(BとC)はすべての事象を散逸させる力であるし、Aもアニマが固有波動を発することで、結果的に集合的無意識を拒絶する「散逸する意識」を生み出すからである。
本項では物語内で重要な位置を占めるAについて解説する。
アニマが発する固有波動により人の意志が上位領域に伝達されると、上位領域の監視者は「またトラブル発生かよ」と下位領域の観測を開始する。だが観測行為は、下位領域に様々な弊害をもたらしてしまう。
そのひとつは、先に述べたエネルギーの流入である。過剰な観測行為は上下領域間のエネルギーバランスを崩し、度を越すとエネルギー流入による事象変移(無機物などの入れ替わり現象)を引き起こす。
ただし後述する意識の散逸に比べれば、これはさほど問題ではない。より重大な弊害は、過剰な観測行為によって集合的無意識からの意識の散逸が加速してしまうことである。これは鶏が先か卵が先か的な矛盾もあるので、そのあたりは軽く流しながら以下を読んでほしい。
意志の伝達と観測行為 45%
観測行為は、意志の発信者(主に上級アニマ反応者)を詳しく調べトラブルに対処するために行われる。トラブルとは散逸する意識の発生であり、これは下位領域を崩壊に近付ける自殺行為であると同時に、監視者たちの存在する上位領域や宇宙集合体に悪影響を及ぼす危険も孕んでいる。ここで意志の伝達をトラブルに例えているのはそのためだ。
トラブルに対処する役目を担う監視者ウ・ドゥは、なぜ下位領域の意識たちが散逸するのか原因を調査し、これ以上意識の散逸が起きないよう、再発防止策を講じるために観測を行う。
しかし意志の伝達が行われた時点では、散逸する意識は発生していない。トラブルの原因調査、つまり観測行為が、散逸する意識を発生させてしまうのである。
これでは本末転倒だが、おそらくこの仕組みは、監視者がリスクマネージメントを正しく行うことを前提に作られているのだろう。つまり観測行為で生じるリスクと、トラブルを放置したままのリスクとを比較し、再発防止策を講じる方が後者よりリスクが小さいと判断した場合にのみ観測を行うのだ。これならば、一方的に意識が散逸し続けて問題は永遠に解決しない、といった悪循環は避けられる。
だが、ウ・ドゥはリスクマネージメントをまったく行っていない。彼は監視者としてはあるまじきことに、下位領域への興味だけで行動しているので、意志の伝達が起きるとほぼ100%観測を行う。どうして意識を散逸させるような真似をするのか、何を考えその意志を持つに至ったのか、意志の発信者(アニマ反応者)に波動を通じて執拗に問いかける。そして聞くだけ聞いて対策は立てない。
上位領域にとって意志の伝達は意識の散逸に繋がる危険な行為だが、下位領域の住人にしてみればまったく与り知らぬことであり、世界を崩壊させようとしたのではなく、普通に「今夜はカレーにしよう」「あいつむかつく」「ねむい」と考えただけである。それなのにいきなり、なにやら恐ろしげな存在*から直接頭の中に問いかけられ、意味の分からない質問を繰り返される。しかもその際、ウ・ドゥは集合的無意識に存在する発信者の意識に問いかけてくる。監視者は下位領域の構造や特性をよく知っているので、より正確に相手の考えを理解するため、敢えて意識が剥き出しとなっている集合的無意識内で観測という名の面接を行うからだ。その結果、隠しておきたい本音や他人には言えない過去、失敗経験など、面接を受けた者のすべてが面接官に筒抜けになってしまう。
*ウ・ドゥに面接された人々は上位領域や宇宙の仕組み、ウ・ドゥの正体などをまったく知らないが、ウ・ドゥが自分たちとは根源から異なる存在、しかもはるかに次元の高い、神のような存在であることは本能的に理解できる。そのため、ウ・ドゥに対し理解の及ばないものに対する恐怖だけでなく、神に対する畏れや恐怖に近い感情を抱くことになる。
観測行為と意識の散逸 50%
集合的無意識内での面接は、こちらの心の中が駄々漏れになるだけでなく、相手の心の中も駄々漏れになる。だが別次元の存在である監視者ウ・ドゥの考えていることの大半は、人間には理解できない。文化的背景など様々なものが、あまりにも違いすぎるからである。
かろうじて「このままだと自分たちの宇宙が崩壊するか、面接官の裁量で消去される」ことだけは理解できるが、いきなりこんなことを知らされたら人間は普通は驚く。驚いて恐怖する。あまりに恐怖しすぎて「そんな運命は嫌だ、そんな世界は嫌だ!」と思うと、面接を受けた側の意識は世界を拒絶する「散逸する意識」となる。
幸い、アニマが伝達するほど強い意志を持つような人間、いわゆる上級アニマ反応者は、即座に世界を拒絶するような真似はしないため、観測行為がアニマ反応者だけに対する面接だけで済むならば、あまり問題にはならない。だが集合的無意識では意志の発信者だけでなく、他にも膨大な数の意識が縁で複雑に絡み合った状態で存在しており、その意識は無防備に晒されている。そのため発信者だけを観測しようとしても、観測の過程で発信者と縁を持つ無数の意識たちに、観測用波動がダイレクトに伝わってしまうのである。
ついでに言えば、大規模観測時の観測用波動は、人間の意識波動よりも桁違いに強い。人間の意識波動の強さが蟻の足音とすれば、観測用波動は至近距離で聞くジェット戦闘機の離陸音(ターボジェット&アフターバーナー使用)である。耳栓や防音設備でどうにかなるレベルではない。絶対に逃げられないのである(Jr.談)。
だが観測行為は、必ずしも他の意識を巻き込むものではない。トラブルの規模、つまり伝達された意志の強弱で観測の規模は変化するからだ。
伝達された意志が弱ければ(あるいは監視者の興味をさほど惹かなければ)観測用波動は微弱なものとなり、巻き添えを食う意識はほぼ発生せず、意識の散逸もまず起こらない。E.S.戦で反応者がアニマの器をガンガン覚醒させ、自分の意志を監視者にガンガン伝達させても、事象変移が起きないのはそのためである。ただ描写されていないだけで、別の場所でグノーシス現象が起きている可能性はある。
逆に伝達された意志が非常に強ければ(あるいは監視者の強い興味を惹けば)観測用波動は強力になり、巻き添えを食う意識が多発し、さらに事象変移を招く危険も高くなる。
大規模な(過剰な)観測行為 20%
大規模な観測行為とは、人がすし詰め状態のコミケ会場(集合的無意識)に監視者が巨大モニター搭載の街宣車で乗りつけ、「宇宙崩壊くぁwせdrftgyふじこlp!!1!」とボリューム最大のコンサート用スピーカーでガンガンに怒鳴りつつグロ画像を映しながら、意志の発信者に近付いていくようなものである。
小規模な観測行為ならば耳元で囁くレベルだが、話す内容は変わらない。
監視者の声を否応なしに聞かされ、自分たちの宇宙(コミケ)が崩壊するイメージ映像を強制的に見せられたコミケ参加者=集合的無意識内の意識たちは、いきなり衝撃の事実を突き付けられて混乱し、恐怖する。そしてそこから逃れようとする。監視者=ウ・ドゥ自身が怖くて逃げる意識もある。また、大半の意識は恐怖に耐えきれずに消滅する。
いずれ世界が崩壊するという現実を拒絶したい、崩壊する世界を拒絶したい、そこから逃げたいという意志を持った意識たちは、拒絶の意志のみを持つ「散逸する意識」となり、集合的無意識から一斉に逸脱していく。その結果、大量の「散逸する意識」が発生し、集合的無意識の崩壊=下位領域宇宙の崩壊を一気に推し進めてしまう。
アニマやアニマの器が固有波動を発すると、観測行為が起きる。そして観測行為は意識の散逸を加速する。入口と出口だけを見れば「アニマが仕事をすると意識の散逸が起きる」となるため、アニマは「散逸の力」と呼ばれるのである。
ちなみに、アニマのCの力は専用回線を用いているうえに観測用とは異なる特殊波動のため、ケイオスが菩薩掌や最愛の徒を使っても、意識の散逸は起きない。
一般人とアニマ反応者の違い 20%
生きている人間の意識波動が観測用波動と接触した場合、実数領域側の人間の大半は、意識という自らの半身が消滅してしまうため白化して死亡する。消滅せず拒絶の意志を持ち、散逸する意識となってしまった場合は、消滅現象と入れ替わり現象を経てグノーシス化する(グノーシス現象)。死んでいる人間の意識波動は消滅するか、散逸する意識となって実数領域に逸脱し、グノーシスとなる(グノーシス出現)。
このように観測行為によって生じたグノーシスの意識波動は、観測用波動の影響を受けているため、波形の一部にその痕跡を残す。自発的散逸由来グノーシスと強制的散逸由来グノーシスは、この観測用波動の波形の有無を調べることで鑑別が可能である。
先にも述べた通り、アニマ反応者、特に上級アニマ反応者はいきなり死亡したり、グノーシス化したりはしない。それは意志がべらぼうに強いため(あるいは超特殊な超構造をしているため)、ちょっとやそっとの恐怖を植え付けられても気にしないからだ。
単に自己主張が強過ぎて監視者の問いかけに耳を貸さないだけかもしれない。特にマーグリスとか。兄さんはマイペースすぎて人の話をあまり聞かなさそうだし。
だが脳の構造が特殊なだけで強い意志を持たない(反応者としての能力が低い)ゾハルの民や、監視者に強い興味を持たれて執拗に付きまとわれた者(シオン)は、微弱な観測用波動に晒されただけでも恐怖に耐えきれず体調不良を来したり、発狂したり、ひどくなると昏睡状態に陥り、やがて死亡する。ちなみにこのとき「こんな世界はいやだ!」と思ってしまうとグノーシスになる。ただシオンは一般人でありながら超々特殊な意識の持ち主なので、絶対にグノーシスにはならない。
監視者は問いかけに応えてくれる相手に飢えているので、うっかり返事をすると延々と付きまとわれてしまうため、注意が必要である。
シオンの場合はウ・ドゥに興味を持たれただけでなく、マリア覚醒時のKOS-MOSが上位領域から放たれる波動エネルギーで稼働していたため、症状が悪化した。詳細は後述する。