この物語は、無数の次元宇宙から成り立つ「宇宙の集合体」ともいえる世界の中の、とある4次元宇宙のひとつで展開する。つまりこのゲームの世界設定における「宇宙」はひとつではなく、劇中の人物が活躍する次元宇宙の他にも、無数に存在するのである。
これらの次元宇宙は互いにバランスをとりあって存在しており、ひとつでも壊れるとその余波で均衡が崩れ、近隣の宇宙が被害を被ったり、ひどい場合は宇宙集合体に壊滅的な打撃を与えてしまう。これを防ぐため、次元宇宙間には様々な安全システムが構築されている。あらかじめ個々の宇宙に安全装置が組み込まれている場合もある。
だがこれらのシステムには、安全装置そのものが宇宙を崩壊させる等、鶏が先か卵が先か的な矛盾が随所に見られる。そのあたりの矛盾をできるだけ減らせないかとの思いが、本考察の出発点のひとつである。
世界観 / Xenosaga
上位領域と下位領域 / Xenosaga
概要 0%
次元宇宙には、高次元のものから低次元のものまで様々な種類がある。次元が異なると、次元宇宙そのものを形作る物理法則や内包するエネルギー量も異なってくる。
作中の世界では原則的に、高次元(上位領域)の宇宙になるほど内包するエネルギーは大きくなる。たとえば主人公たちが暮らしている4次元宇宙より高次元の宇宙のエネルギーは、ほんの僅かであっても舞台となっている宇宙にとっては膨大なエネルギーとなる(たとえば水爆100兆発分とかとにかくすごいレベル)。
この場合、主人公たちの4次元宇宙は上位領域に対し下位領域と定義される。上位と下位領域が一対であるかどうかは不明だが、作中の下位領域宇宙に干渉してくる上位領域宇宙はひとつしか登場しない。
下位領域宇宙は、上位領域宇宙に生じたゆらぎが波動となって領域外にこぼれ落ちることで誕生する。また、下位領域宇宙の消去(自壊・崩壊は別)の決定と実行も、上位領域宇宙が担っている。つまり下位領域宇宙は誕生から消去まで、自分を生み出した上位領域宇宙の関与を受け続けることになる。
上位領域の役割 0%
なぜ上位領域宇宙が下位領域宇宙に関与し続けるかというと、次元宇宙間のバランスを保つためである。下位領域宇宙が突然崩壊したりすれば、その余波で上位領域のみならず、宇宙集合体もなんらかの被害を被る可能性があるからだ。つまり自分たちの宇宙を含めた宇宙集合体を守るため、上位領域宇宙は下位領域宇宙を監視し、管理するのである。
監視と管理を行うために、下位領域宇宙には創造時から「下位領域管理システム」とてもいうべき、三つの要素で構成されたシステムが設置されている。「ゾハル」という物理的構造物(扉)、形を持たないプログラムのような「アニマ」と「アニムス」である。
またこれらとは別に、上位領域から独立して行動する「宇宙保護システム」も設置されており、これは下位領域宇宙をとにかく存続させ続けるためだけに働く(フェイルセイフも含めた下位領域宇宙の消滅をすべて回避させる)。
これらのシステムは上位領域の存在が設置したのか、宇宙集合体の意志で設置されたのか、それとも何者の干渉も受けず自然に生まれたものかは不明である。
またもしかしたら、ゾハルはもともと上位領域の物質であり、下位領域宇宙を生み出すための装置なのかもしれない(宇宙の創造もゾハルを通じて行われたという意味)。
下位領域から見た上位領域 5%
低次元(下位領域)の存在(生命体等)は高次元(上位領域)の宇宙を知覚することはできないため、上位領域が存在することを知らない。また上位領域側の住人は下位領域の存在を知っているが、上位領域側の住人が自発的に下位領域側の住人と接触することはない(ウ・ドゥは例外中の例外)。
上位領域と下位領域の存在が互いに接触できるのは、ゾハルという扉が開いたときのみである。だが扉が開いても、下位領域の住人から上位領域の住人や上位領域そのものを明確に知覚することはできない。作中における上位領域の住人はウ・ドゥと呼ばれる意識体であるが、彼は下位領域側から波動や揺らぎ、膨大なエネルギー等といった漠然とした形で認識されている。上位領域でも意識体として存在するのか、下位領域に意識体として認識されるだけで上位領域では他の形態をとっているのかは不明である*。
*上位領域の住人がウ・ドゥだけであるとは限らない。ひとつの上位領域がひとつの下位領域だけを管理しているとも限らない。ひとつの上位領域は無数の下位領域を管理しているのかもしれないし、ひとつの下位領域に対し管理人が複数存在する可能性もある。
この考察では、ひとつの上位領域が複数の下位領域を管理しており、ひとつの下位領域につき最低2名の管理人が存在すると仮定している。下位領域を創造した者(創造者)と、下位領域が存続中にこれを監視・管理し、必要に応じて消去する者(監視者)である。創造者は上司、監視者は部下にあたり、業務が多くて大変なのは当然部下の監視者である。
ゾハル(扉) / Xenosaga
ゾハルとは 5%
ゾハルとは、上位領域と下位領域の接点である。上位領域が下位領域を監視・管理するため、下位領域宇宙の誕生時から設置されており、上下領域間を結ぶ扉のようなものともえいる。宇宙の集合体を崩壊から守るために、各次元宇宙に設置された安全装置の一部であるとの見方もできる。
(ゼノギアスにおけるゾハルに関しては別項で解説予定)
ゾハルの起動 5%
扉が開く、ということは、ゾハルが起動(稼働)するということである。ゾハルを起動させる原因は下位領域の住人が作るが、実際に起動させるのは上位領域の住人である。つまり扉は上位領域側からしか開かない。
ゾハルは下位領域側でトラブルが発生したときのみ、トラブルシューティングのために起動される。この場合のトラブルとは、上位領域や宇宙集合体にとってのトラブルのことである。
なお、修復不可能な重大かつ深刻なトラブルが発生した場合には、下位領域を消去して宇宙間のバランスを保つために起動される(フェイルセイフ)。
トラブルの発生とトラブルシューティング 5%
トラブルの発生は、下位領域側からの意志の伝達という形で上位領域に伝えられる。ただ下位領域の住人たちは上位領域が存在するということすら知らないため、上位領域に意志を伝達しようとして伝達する訳ではなく、明確な意図を持ってアクセスしているのでもない。下位領域の住人たちが意図せず起こしたトラブルが、第三者により勝手に報告されているだけである。
意志の伝達を行う第三者、つまり報告者とは、ゾハル同様下位領域宇宙に予め設置された自律エラー報告システム「アニマ」である。意志の伝達=トラブル発生の報告はしばしば発生するが、不幸なことに、下位領域の住人は自分たちがトラブルを起こしている自覚がまったくない(宇宙保護システム=ヴィルヘルムを除く)。
トラブル発生を感知した上位領域の監視者は、ゾハルを起動させて上下領域間を交通させ、意志の発信者を観測(調査)しトラブルシューティングを行う。ゾハルの起動は上位領域側の住人による監視を意味するが、上位領域の住人である監視者が観測に用いる波動は、下位領域にとって相対的に高いエネルギーを内包しているため、下位領域を監視する行為そのものがエネルギーの流入を招く*。つまりゾハルが起動すると、下位領域にとって大量のエネルギーが、ゾハルを通じて上位領域から下位領域へともたらされるのである。
*詳細は後述するが、作中世界(下位領域)の人々は、この観測用に用いる波動をウ・ドゥと呼び、意識を持つ(らしい)波動として認識している。また、ゾハルが発するエネルギーが波動の形態を持つことも判明しているが、この波動がウ・ドゥそのものだとまでは理解していないようだ(Ep.1でM.O.M.O.を挟みJr.と対峙したアルベドは「(ミルチア紛争時に)俺の中に流れ込んできた波動」がウ・ドゥであると認識していたが、これがゾハルからもたらされたことに気付いていなかった)。
ちなみに、監視者本人(ウ・ドゥの発信源)は上位領域から一歩も出ていない。下位領域に放たれるのは、あくまでも観測用の波動だけである。
作中では「監視者=ウ・ドゥ≠観測用波動」「監視者=ウ・ドゥ=観測用波動」といった使用法が混在しており、プレイヤーを混乱させている。
下位領域の住人である人間達は、この現象を「ゾハルが起動した」と表現している。実際は上位領域側の管理者が監視を行うためにゾハルを起動させているのだが、人間達は上位領域の存在自体を知らないため、ゾハルがエネルギーを発生させている状態を「ゾハルが起動状態にある」と定義した。そして、アニマがゾハルを起動させることまでは把握していた。
なお詳細は後述するが、人間が気付かないくらい僅かなエネルギーが流入する、つまり人間が気付かないレベルでゾハルがこっそり起動していることもある。
上位領域の監視者によるトラブルシューティング、つまり作中で観測行為と呼ばれる行動は、度を越すとそれだけで下位領域宇宙を崩壊させてしまうため(後述)、下位領域側からトラブルシューティングを補佐するシステムが存在する。それが監視コントロールシステム「アニムス」である。アニムスは観測行為をコントロールし(厳密には観測行為そのものをコントロールするのではなく、観測に伴う下位領域への悪影響、つまり疾患の治療に伴う合併症や薬の副作用のようなものを抑制している)、下位領域に及ぼす影響を可能な限り抑制する。アニムスもアニマやゾハル同様、下位領域宇宙の誕生時に設置されたシステムである。
作中世界での一般的な認識では、ウ・ドゥとは意識を持ったエネルギー波動のことだが、以降本稿では便宜上これを「観測用波動」と記載する。本稿におけるウ・ドゥは、観測用波動を発信した張本人、つまり上位領域の監視者を指すこととする。