アニムス総論 / Xenosaga
アニムスの構造 5%
アニムスは作中では人の姿を取り、キャラクタープレイヤーの一人「KOS-MOS」として登場する。ただしこれは物語の舞台となるTC4760年代のことで、AD40年頃まではイエス・キリストの妻「マグダラのマリア」として存在していた。
古代ロストエルサレム時代、アニムス=マリアは三つの要素で構成されていた。
古代ロストエルサレム時代のアニムスの構造
1. 虚数領域=集合的無意識内のアニムスの意識・心(AD40年頃に集合的無意識内に四散)
2. 実数領域の虚像(他人から「マリア」と定義されていた姿、実在しない)
3. アニムスの能力と力(AD40年頃に集合的無意識内に四散)←これが本体
これに対し、TC4760年頃のアニムス=KOS-MOSを構成する要素は以下である。
TC4760年頃のアニムスの構造
1'. 虚数領域=集合的無意識内のアニムスの意識・心(四散したものを集め再統合した)
2'. 実数領域のKOS-MOSの躯体(実在する)
3'. アニムスの能力と力(四散したものを集め再統合した)←これが本体
1と3および1'と3'は、ほぼ不可分で同一のものである。また1'と3'は作中ではほぼ稼働停止状態にあり、特定の条件が揃わなければ機能しない。
1'と3'はAD40年頃に失われたものを回収および再統合し、TC4765年(アーキタイプ事故)の時点で既にKOS-MOSに移植済みである。だが再統合されたマリアの意識は、マリアの記憶を持った新たな人格、つまりKOS-MOSの意識に変化している。なお1'3'ともにゲーム開始時はほぼ稼働停止中だが、ゲームの終盤で完全に起動し、最後はKOS-MOSの意思で3'をネピリムに委譲している。
アニムスが持つ三つの機能 40%
アニムスの存在意義は宇宙集合体の保護である。通常時は観測行為抑制システムとして機能するが、フェイルセイフ発動が確定した場合は、アニマによる次元宇宙の消去を補佐することで次元宇宙の崩壊を回避する。つまりアニムスは、次元宇宙の崩壊を回避することで宇宙集合体を保護するシステムである。
また、アニムスは単独で機能することはほとんど無く、観測行為のコントロールやフェイルセイフの補佐のように、基本的にアニマが機能する際に連動してそれを補佐するシステムとして運用される。
アニムスは宇宙集合体を守るため、三つの機能を有している。
A. 観測行為の調節
B. フェイルセイフ補佐
C. エントロピー減少=すべてを収束させる
A. 観測行為の調節
通常時のアニムスは、トラブル発生に伴う観測行為を抑制的にコントロールすることで意識の散逸を最低限に抑え、次元宇宙の崩壊を遅延させる。遅延させることで崩壊を回避するのである。
B. フェイルセイフ補佐(いちばん重要)
アニマがフェイルセイフを実行する際、アニムスは上位領域からの指示ではなく、アニマからの要請を受けてこれを補佐する。アニマが単体でフェイルセイフを実行しようとすると、宇宙が崩壊してしまうからである。
C.エントロピー減少
アニムスは下位領域のすべての事象のエントロピーを減少させる力(散らかったものを整理整頓する力)を持つ。作中データベースでは「力を秩序立てる力」とあり、Ep.1でKOS-MOSが大量のグノーシスを吸収した場面がこれに該当する。
観測行為の調整(A)とフェイルセイフの補佐(B)は、アニムスの意志とは無関係に完全に自動で行われる。宇宙の崩壊を防ぐため、観測行為は可能なかぎり抑制する必要がある。だが抑制時にアニムスの意志が関与すると、そのぶんタイムラグが生じ、散逸する意識が増えてしまう。ゆえに観測行為の調整は、アニムスの意志の関与なしに行われる。フェイルセイフの補佐(B)も同様で、意志という不確定要素を完全に排除した状態で遂行される。
エントロピー現象(C)はさほど下位領域や宇宙集合体に影響を与えないので、すべてアニムスの意志(1)だけで行う。これはアニムスが任務(AとB)を円滑に遂行できるよう付与された力ともいえる。
また、これらの能力を行使するために必要なエネルギーの供給要請は基本監視者に対して行われるが、なんらかのトラブルが生じ監視者(部下)に接続できなかった場合は創造者(上司)へと伝達され、創造者が監視者の役目を代行する。
アニムスのお仕事(まとめ)
A. 観測行為の抑制的コントロール(自動)
B. フェイルセイフ補佐(自動)いちばん重要
C. エントロピー減少=すべてを散逸させる(手動)
アニムスの能力と力 80%
A〜Cそれぞれについて、実際どのようにエネルギーが行使されるのかを解説する。
A. 観測行為の抑制的コントロール
1. アニマが上位領域に意志を伝達する
2. 同時にアニムスが上位領域に観測調整用エネルギーを要請する
3. 意志の伝達とアニムスの要請を受けた上位領域の監視者が観測を開始
4. ゾハルを経由して観測用波動と観測調整用エネルギーが集合的無意識に放たれる
5. 観測調整用エネルギーがアニムスの本体(集合的無意識に存在している)に到達
6. アニムスが自分に届いたエネルギーを用いて散逸しかけた意識を収束させる
アニマとアニムスはゾハルと共に「下位領域管理システム」というひとつのシステムを構成しており、三者間の伝達は集合的無意識に設けた専用回線を通じて行われる。この専用回線は縁や意志の強弱といった下位領域的な影響をまったく受けないため、実数領域の虚像がどれだけ離れた場所に存在していても、アニマが意志の伝達を行えば、アニムスは即座にそれを感知してリアルタイムで作動する。
また、アニムスがエネルギーを要請する際は、具体的な供給量を指定する。つまりアニマが伝達する意志の強さから散逸する意識の発生量を試算し、その上で調整用エネルギーを要請するのである。ただしあくまでも試算のため、散逸する意識が発生してしまう可能性は残る。観測の規模が大きければ大きいほど、散逸する意識も増えてしまう。
作中のアニムスは機能停止中なので、調整用エネルギーの要請は行われず、要請がないので監視者もアニムス用エネルギーを供給していない。
B. フェイルセイフ補佐
1. アニマが上位領域にフェイルセイフを要請する
2. 同時にアニムスが上位領域にフェイルセイフ補佐用エネルギーを要請する
3. 要請を受けた上位領域の監視者がフェイルセイフ用(補佐用含む)エネルギーの供給を開始
4. ゾハルを経由してフェイルセイフ用エネルギー(補佐用含む)が集合的無意識に放たれる
5. エネルギーがアニマとアニムスの本体(集合的無意識に存在している)に到達
6. アニムスが自分に届いたエネルギーを用いてアニマと共にフェイルセイフを実行する
フェイルセイフでは観測は行われないため、上位領域から供給されるのは観測調整用波動ではなく、フェイルセイフ補佐専用のエネルギーである。これは意識を収束させる力ではなく、アニマのエントロピー増大の力をコントロールするための力、つまりエントロピー減少の力である。もしフェイルセイフ実行にアニムスが関与しなかった場合は「宇宙の秩序立った消去」でなく「宇宙の崩壊」が起きる。
C. エントロピー減少(上位領域の監視者に稟議書を提出)
1. アニムス自身が意志を持つ(仲間を癒したい、敵を攻撃したいetc)
2. アニムスが自分の意志を上位領域に伝達する
3. 伝達を受けた上位領域の監視者がアニムス用エネルギーを供給
4. ゾハルを経由してアニムス用エネルギーが集合的無意識に放たれる
5. エネルギーがアニムスの本体(集合的無意識に存在している)に到達
6. アニムスが自分に届いたエネルギーを意志に沿う形で行使する
(対象のエントロピーを減少させる)。
作中でKOS-MOSが散々力を行使してもグノーシス現象は見られなかったので、アニムスが行使する上位領域のエネルギーはアニムス専用のエネルギーであり、観測用波動とは別物であると推察できる。だが上位領域のエネルギーであることに変わりはない。上級アニマ反応者でもないかぎり、エネルギー(波動)の直撃を受けても無傷で済む意識波動はまずいない。
Ep.3のケビンの台詞「KOS-MOSが力を使うたびにシオンの寿命が縮む」は、アニムス=KOS-MOSがこの力を行使する際はアニムスの意識波動に向けてエネルギーの供給が行われるため、彼女と強い縁を持つシオンが影響を受けてしまうことを指している(後述)。ちなみにシオンは上級アニマ反応者ではない。特殊な力を与えられた一般人である。
上で述べたA〜Cは、すべては力(power)ではなく能力(ability)である。これらはアニムス自身が持つ力ではなく、上位領域がアニムスのために供給した力であり、アニムスはそれを行使しているだけだからだ。
アニムスはアニマと異なり、A〜Cで流入したすべての力を利用できる。当然、これらの力はアニムスしか利用できない。このことから、A〜Cすべてがアニムスの力(実際は能力)だといえる。
BとCは機序がほとんど同じことから、おそらく供給されるエネルギーも同じであると考えられる。つまりどちらもエントロピーを減少させるエネルギーであり、Bの超弱小版がCといえる。
アニムス専用エネルギー(エントロピー減少エネルギー)をそのまま用いると宇宙がアニマとは逆の意味で崩壊し(ブラックホールみたいな感じ)、アニマと共同運用すれば宇宙が消去される。また超弱小版として用いると限定的な収束現象=エントロピー減少が発生する。
Aはマリアの存命中にしばしば行使されていた。Bもマリアの存命中にフェイルセイフ発動が確定したため行使されるはずだったが、このときアニムスは動作不良を起こしていたので(後述)アニマの自動補佐は行われず、逆にフェイルセイフを回避するためアニマを分断した。つまりアニムス本来の機能を放棄したのである。このため宇宙は消去こそ免れたが、下位領域の状況(意識が散逸しまくりで崩壊寸前)は改善されなかった。物語の舞台である次元宇宙が崩壊間近であるのはこのためである。
作中のアニムスは終盤まで能力と意識が未覚醒状態にあり、KOS-MOSはA〜Cのほとんどを行使できない状態にある。だがアニムスの能力と意識が一時的に覚醒した際、Cを行使している。
余談 リスクマネージメントの観点から -下位領域管理におけるヒューマンエラーの予防-
アニマの項でも述べたが、アニムスのA(観測調整用エネルギー)、B(フェイルセイフ補佐用エネルギー)、C(アニムス用エネルギー)と、アニマのB(フェイルセイフ用エネルギー)、C(アニマ用エネルギー)は、すべて同じものである可能性がある。両者はこれらをそれぞれの特性に応じて変換(コンデンサみたいなもん)したうえで行使しているということだ。つまり同じエネルギーがアニマを通せばエントロピー増大作用を示し、アニムスを通せば逆にエントロピー減少の方向に作用するのである。
監視者はどうやらウ・ドゥひとりしかいないようなので(この時点で既にあれだが)、監視者の手間はできるだけ減らし、あとはシステムに任せた方が、管理上のヒューマン?エラーの発生(「あっ、間違えてアニマにアニムスのエネルギー送っちゃった!」みたいなやつ)を減らせるのではとの考えから、この仮説を立ててみた。
もちろんこのエラー防止の取り組みが成り立つ大前提として、監視者がルールを守って作業をこなし、システムもきっちりメンテナンスされている必要がある。作中の世界ではグダグダだが(ウ・ドゥはあれだしアニマもアニムスも故障中、まともなのはゾハルだけといった惨憺たる有り様)、正しく運用されていれば、それなりに盤石なシステムだったのだろう。
アニムスの力 50%
アニムスの特徴として、A〜Cすべてが結果的に何かしらを収束させている。Aは観測行為で発生した散逸する意識を収束させ、Bはアニマのエントロピー増大能力をコントロールすることで散逸する次元宇宙を収束させ(最終的には消去へと導く)、Cはすべての事象のエントロピーを減少させることで様々なものを収束させる。以上のことから、アニムスの力はA〜Cをまとめて「収束の力」と呼ばれている。
アニムスは物語の舞台となったTC4760年代には意識と力が休眠状態にあり、シオンが目覚めさせたときにだけ覚醒し(意図的に目覚めさせたのではなく、シオン自身が危機に陥った際にアニムスが自主的に覚醒した)、Cの力を行使している。覚醒時はKOS-MOSの瞳は青くなるので、判別は容易である。
前述のex.1〜3に加え、Ep.2でヴォイジャーに襲撃されたシオンを守るために起動し、ディナと合体した際や、Ep.3序盤でT-elosに破壊された直後にも瞳の色は変化している。これらにおいて明らかな収束を思わせる描写はないが、アンドロイドとしてのKOS-MOSの力だけでなく、何らかの形でCの力を行使していたと思われる。
アニムスの力の使用例 70%
劇中には、アニムス=マリアの意識が覚醒し、Cの能力を行使していると思われる場面がいくつか登場する。
ex.1 Ep.IでKOS-MOSが大量のグノーシスを吸収した場面
・アニムスの意志で行われた
躯体に搭載された意識収集装置を作動させ、グノーシスを吸収した。これはコンパクトタイプのツァラトゥストラ(あるいはネピリムの歌声装置)とも言える装置だが*、KOS-MOSに搭載されているのはケビンがヨアキムの技術を用いて開発した「マリアの意識回収装置」であるため、本来ならばグノーシスは吸収しない。それにも関わらずほぼすべてのグノーシスを吸収したのは、アニムスのCの力でグノーシス=散逸する意識を強制的に収束させ、自らの内に取り込んだからである。
ex.2 Ep.1のラストで大気圏に突入したエルザをアニマ=ケイオスと共に守る場面
・アニムスの意志で行われた
増大するエルザのエントロピーを減少させることでエルザを保護した(アニマは大気との摩擦熱を他のエネルギーへと変換する(散逸させる)ことでエントロピーを増大させ、エルザとKOS-MOSを保護した)。(この解釈はかなり素人によるこじつけ感が強いのであまり突っ込まないで下さい)
ex.3 Ep.3のラストで全ての散逸する意識たちをロストエルサレムへと導いた場面
・マリアからアニムスの力を譲渡されたネピリムの意志で行われた
ツァラトゥストラが集めた強制的散逸由来グノーシスだけでなく*、自発的散逸由来グノーシスも強制的に収束させ、ex.1同様自らの内に取り込んだ。
cf.「わが揺りかごに集いし意識たちよ 全ての始まりの場所 原初なる地へ」
1と3で収束させたグノーシスがどうなるのかについてだが、自らの内が集合的無意識である可能性はある。物語のエピローグでケイオスが「ネピリムによるグノーシス収束を伴う領域シフトを行えば、宇宙の崩壊の速度が遅くなる」と言っているからだ。
ネピリムはすべてのグノーシスを集合的無意識に合一させることはできなかったが、ある程度のグノーシスを合一させることはできた。しぼんでいた風船=集合的無意識は少しだけ膨らみ、崩壊までいくばくかの猶予が生まれたのである。
*ツァラトゥストラが収集するのは、強制的散逸由来グノーシスのみである。ツァラトゥストラはメルカバーの推進燃料を集める装置であり、強制的散逸由来グノーシスが含有するウ・ドゥの波動を収集・抽出することで推進力を確保する(後述)。
ツァラトゥストラを参考に造られたネピリムの歌声装置は、ヨアキムによって散逸した意識以外も吸収する(目的とする波形を持つ意識=サクラの意識を特定・回収)よう改良されている。彼の助手を務めていたケビンは四散したマリアの意識を回収するため、この技術を応用したマリアの意識回収装置を開発し、KOS-MOSに搭載した。
アニムスの覚醒 / Xenosaga
概要 95%
アニムスの役目は、観測行為に伴い発生した散逸する意識を収束させ、次元宇宙の崩壊を遅延させることである(A)。またフェイルセイフ実行の際、アニマの力を調整する役目もある(B)。ときには自らの意志(エネルギーくれ)を上位領域の監視者に伝達することもある(C)。この調整や伝達に必要なのが「アニムスの覚醒」である。
だがアニムスの覚醒は、アニマの覚醒とはまったく意味が異なる。
本来、アニムスは他者による覚醒を必要としない。一歩間違えれば即座に宇宙を崩壊させてしまう観測行為を確実にコントロールするため、また宇宙集合体を守るためのフェイルセイフを確実に補佐するため、アニムスは他者による覚醒という不確実な要素に頼ることなく、アニムスだけで完結して機能するのだ。AとBが共にアニムスの意志を介在させることなく、自動で行われるのも同じ理由である。
逆にアニマの場合は、過剰な観測は宇宙の崩壊を早めてしまうため、他者による覚醒および伝達する意志の選別といった複数のハードルが設けられている。
だが、AD30年頃に存在していたアニムス=マリアは、彼女の親友だった一人の少女にアニムスの力の一部を譲渡してしまったので(後述)、これ以降アニムスは、少女の助けがないと機能できなくなってしまった。アニムスはアニマが意志を伝達すると同時に観測行為の調整を開始するが、このとき少女によるアニムスの力の起動という一手間が必要になったのである。このマリアを補佐していた少女が、マリアの巫女=シオンの前世である。
巫女の役割 100%
巫女が譲渡された力は、おそらくCの一部と思われる。アニムスの意志で扱える力はCだけだからだ。しかし秩序を具現した存在であったアニムスは、力の一部を譲渡したことでアニムスそのものの秩序を失い、常に不安定な状態、つまり放って置くとエントロピーが増大し続けるという、本質とは真逆の状態に陥ってしまった。
この不安定なアニムスのエントロピーを、譲渡されたCの力を用いて減少させ、アニムスを秩序立てて起動し、機能できる状態に持っていくのが巫女の役目だった。つまりアニムスの「エントロピー減少」というCの力の一部を譲り受けた巫女が、その力を行使してアニムスを正常な状態に戻し、アニムスのAの機能を発動させた。
ゆえにアニムスの覚醒という表現は厳密には正しくなく、アニムスの安定化というべきである。
シオンの役割 75%
TC4700年代になると、新たな問題が生じてくる。
アニムスの意識と力(能力)はAD40年頃に崩壊し、集合的無意識内に四散してしまうのだが、TC4700年代後半、永劫回帰という目的のためにこれを回収・再統合し、アニムスの復活を試みた者たちがいた。ヴィルヘルムとその部下、ケビン・ウィニコットである。
ケビンは人の意識について研究していた歴史的超大天才ヨアキムに師事し、彼の技術を密かに流用することで、アニムスの意識と力を回収した。アニムスの意識と力はほぼ不可分なので、意識の回収は力の回収にも繋がった。これらを再統合するまでは成功したが(後述)、復活したはずのアニムスの意識は休眠状態にあり、意識とほぼ同一のものであるアニムスの力の起動も不可能だった。力の一部をシオンが持ったままだったからである。
そこで彼らは「トモダチ作戦」、つまりアニムスの力の一部を持ち、かつアニムスの意識=マリアの心と深く繋がっていた人物、マリアの半身とでも言うべき存在だった巫女を利用することにした。アニムスの力を完全なものとし、さらに縁の強い意識同士の共鳴効果を狙ったのだ。
もともと永劫回帰には、アニムスだけでなく巫女も必要だったため、彼らは巫女の意識も復活させていた。幸い、巫女の意識を新たな肉の器(シオンの肉体)に宿らせることには成功していたので、アニムスの意識と力を固着したKOS-MOSを巫女(シオン)の傍に置き、両者を深く交流させることで、アニムスの起動つまりマリアの目覚めを促したのである。
彼らの目論見通り、KOS-MOSの中に眠っていたアニムスの意識は、巫女と深く関わっていくうちに一時的な覚醒を繰り返し、最終的には完全な覚醒に至った。これもアニマの覚醒とは意味合いが異なり、アニムス=マリアの復活というべきである。
私はKOS-MOSです 100%
KOS-MOSにはアンドロイドKOS-MOSとしての意識がある。つまりアニムスの意識(と力)はKOS-MOSの意識とは別物である。だが両者の間には「器と意識」という強い縁が存在していた。
シオンの意識はKOS-MOSの意識と強い縁を持っていた。そしてKOS-MOSの意識はアニムスの意識と強い縁を持っていた。さらにシオンの意識は、アニムスの意識との間に6000年前から続く強い縁を持っていた。
集合的無意識において、互いに深い縁を持っていた三つの意識が共鳴した結果、アニムスの意識は覚醒した。さらにアニムスの意識はKOS-MOSの意識と共鳴を続け、とうとう共鳴のしすぎで両者の意識波動は融合してしまった。いちどはマリアとして覚醒したアニムスが「私はKOS-MOSです」と断言した理由はこれである。マリアの意識波動がKOS-MOSのそれと融合し、新たなひとつの意識波動となったのだ。