巫女の誕生
古代ロストエルサレムにおいて、アニムスはアニマと共に人の姿を取り、おそらく21世紀のイスラエルに当たる地域で人間として暮らしていた。アニムスは人々にマリアの名で呼ばれ、彼女には半身とも称されるほど親しい間柄にあった少女がいた。マリアは彼女を愛するあまり、自らの力の一部を分け与える。彼女を失うことに怯え、永遠に少女と共にいたいと願ったからだ。
"Xenogears"および"Xenosaga"の超個人的見解入りまくり二次創作的考察
Xenosaga
世界観
上位領域と下位領域
ゾハル(扉)
下位領域の監視と管理
虚数領域と実数領域
集合的無意識とU.M.N.
散逸する意識とグノーシス
グノーシス遭遇事故
事象変移
事象変移で見られる現象
事象変移補足
グノーシスとの接触
レアリエンとグノーシス
グノーシスの分類他
グノーシスとゾハル
宇宙の崩壊
アニマとアニムスおよび
宇宙保護システム
アニマ総論
アニマの覚醒
アニマの反応者
散逸の力
アニムス総論
アニムスの覚醒
マリアと巫女
アニムス(マリア)の復活
古代ロストエルサレムにおいて、アニムスはアニマと共に人の姿を取り、おそらく21世紀のイスラエルに当たる地域で人間として暮らしていた。アニムスは人々にマリアの名で呼ばれ、彼女には半身とも称されるほど親しい間柄にあった少女がいた。マリアは彼女を愛するあまり、自らの力の一部を分け与える。彼女を失うことに怯え、永遠に少女と共にいたいと願ったからだ。
AD30年頃にマリアからアニムスのCの力の一部を与えられた巫女は、おそらくシオンと同じ病に冒されていったと思われる。ケイオスやマリア、そして巫女はイエス・キリストと行動を共にしていたが、彼らの起こす奇跡の力の源は、ウ・ドゥの観測行為だった。このときのプロセスを以下に記載する。
★の段階で巫女が観測対象となった時点ではアニムスは未起動のため、観測行為は抑制されない。つまりアニマ反応者でもない、ごく普通の人間だった巫女は、イエスたちが奇跡を起こすたびにまったくの無防備状態でウ・ドゥと接触し、彼がもたらす根源的な恐怖に晒されていた。それでも彼女が正気を保っていられたのは、譲渡された力、全てを秩序立てるアニムスの力が、意識の散逸を防いでいたからである。それでも度重なる接触は、巫女の心身を蝕んでいった。
詳細は不明だが、巫女はアニムスを残し死亡している。巫女の死はアニムスに深い悔恨を植え付け、この出来事は後々までもアニムスを縛る枷となった。Ep.3終盤で復活したマリア=アニムスがヴィルヘルムの命令に当初逆らえなかったのは、彼にマリアの浅慮(力の譲渡)が巫女の死を招いたことを指摘されたからである。
アニムスの意識と力は、AD40年代に集合的無意識内に四散した。アニムスと対であるアニマを12分割したことで、アニムス自身も分断されてしまったのである。これだけならばアニムスも12分割されただけで済んだはずだが、アニマの分断はアニマのエントロピーを増大させることであり、アニムスの本質「エントロピー減少」とは真逆の行為であったため、アニムスの意識と力には多大な負荷がかかった。そのためアニムスの意識と力は分断どころか崩壊してしまい、それ以降、下位領域はアニムスが不在となる。
アニムスがアニマを分断したのには理由があった。意識の散逸現象がフェイルセイフ発動レベルに達し、アニマが上位領域に宇宙の崩壊が確定したことを報告しようとしたからだ。
本来、アニムスは宇宙の崩壊を回避するためのシステムである。このときアニムスが正常に機能していれば、アニマと連動して下位領域を消去する機能を発動させたはずだ。しかしアニムスは巫女に力の一部を譲渡していたため正常に作動せず(バグ発生)、アニマの分断という、アニムスの存在意義=宇宙集合体の保護とは正反対の行動を取った。
アニムスの意識と力はほぼ同一のものだったので、力を分割したことでアニムスの動態を決定していた意識(目的の達成を最優先事項とするよう指示したプログラムのようなもの)も変化していた。その結果、宇宙集合体ではなく巫女を守るための行動をアニムスは選択した。宇宙が消去されると、永遠に共にいたいと願った愛しい巫女が消えてしまうからだ。
他にも自分たちの安易な行動が世界を崩壊に導いてしまったことへの後悔であるとか、フェイルセイフ回避に至った理由は色々とあっただろうが、それらの感情をもたらしたのは、やはり力の譲渡によるアニムスの意識の変容だろう。
KOS-MOSはマリアを復活させるために様々な機能を搭載したアンドロイドとして、ヴィルヘルムやケビンらによって製作された。なぜマリアの復活が必要だったかというと、永劫回帰を実行するためである。
当初はKOS-MOSをマリアとする予定だったが、KOS-MOSの中で目覚めつつあるマリアの意識が別物らしいと気付き、KOS-MOSでは本来のマリアの復活が望めない、つまり永劫回帰を達成できないと判断し、T-elosという新たな意識の器を用いたマリアの復活を試みることになった。
マリアが完全に復活するのは物語の終盤だが、それ以前にも計4回、マリアの意識は一時的に目覚めている。
上記1〜4に共通しているのは、シオンが危機に陥っているということである(描写がないだけで、ヴォークリンデにおける起動時や、過去のミルチアにおけるヴォイジャー襲撃時にも変化していたのかもしれない)。
シオンはヴィルヘルムらによって復活させられた巫女、つまりマリアが愛した巫女の生まれ変わりなので、KOS-MOSの中に眠るマリアの意識が彼女を守るために一時的に覚醒し、アニムスの力を行使したのである。
原理は不明だが、こうした覚醒を繰り返すことでマリアの意識=アニムスの力は徐々に覚醒していくらしい。何度も目覚ましが鳴ってようやく起きるようなものだろうか。
とにかく、マリアの復活を望む者たちは、シオンとKOS-MOSを一緒に行動させた上で意図的にシオンを危機に陥らせ、マリアの覚醒を促した。そしてこれらの過程を経て、KOS-MOSに固着されたマリアの意識は、完全に覚醒するに至ったのである。
1〜4と少しずつ完全な覚醒へと近付いていたマリアの意識は、ミクタムの地下遺跡でようやく目覚める。そこはかつてマリアが人間として存在していた頃、深い後悔と共に封印した場所だった。マリアの半身であった巫女が、その先に眠る神の遺物、ツァラトゥストラの前で命を落としたからである。
巫女の生まれ変わりであるシオンは、ネピリムとケイオスに導かれてKOS-MOSの意識の最深部、深層領域へと足を踏み入れる。そこで過去を垣間見たシオンは、巫女であった頃の記憶こそないものの(あれはシオンの巫女としての記憶らしいが、彼女はそれに気付いていない)KOS-MOSの深層領域で眠るマリアの意識と深く共鳴し、彼女を目覚めさせた。そしてアニムスが完全に起動したことで、ツァラトゥストラも本来の機能を取り戻した。
KOS-MOSの中で目覚めた意識は、古代ロストエルサレム時代に生きていたマリアそのものの意識ではなかった。マリアの記憶を受け継いではいたが、KOS-MOSとしてシオンの傍で過ごした日々は、確実にマリアを変えていたのである。これは別人になったのではなく、6000年前のマリアと、6000年+回収・統合されてからの年月を過ごしたマリアの違いであり、同じ人物でも月日と共に意識は変容していく、つまり人の心は常に変わっていくために生じた変化であった*。深い眠りについてはいても、マリアの意識はKOS-MOSの中で様々な経験をし、シオンと共に喜びや悲しみを感じていたのだ。
新たなマリアとして目覚めた意識は、KOS-MOSの瞳を青く変えた。そしてマリアの亡骸であるT-elosを倒し、本来の肉体との統合を果たしたKOS-MOSは、アニムスとして完全なる復活を遂げたのだった(その後アニムスの意識はマリアではなくKOS-MOSであるとの自覚を持ち、KOS-MOSの瞳は紅く変化した)。
*同じ人物でも、二十才の頃と四十才の頃とでは、大事なものや考え方などが変わるということ。そんなの当たり前だと思うのだが、ケビンやヴィルヘルムはそれを考慮していなかった(ヴィルヘルムは人間じゃないから分からなかった可能性はある。なにしろ6000年以上も永劫回帰を成功させることだけを考え続けた「歪みねぇ」お方ですし…)(じゃあケビンはというと、天才すぎて一般人の思考が理解できなかったのかもしれない)。