アニマの反応者 / Xenosaga
アニマ反応者とは
アニマを覚醒させる能力を持つ者を、アニマ反応者と呼ぶ。
彼らは強い意志を持った者であり、具体的には、能動的に集合的無意識への合一を拒絶できる意識を持つ者がそれに該当する。そのような人間のうち、アニマを完全覚醒させるほど強い意志を持つ者は、攻略本等の解説で「テスタメント因子を持つ者」と表現される。人間以外の生命体や物質は、アニマを覚醒させるだけの強い意志は持たないという設定らしい。
アニマ反応者は以下の能力を持っている。
1.アニマを覚醒させ、固有波動を発せられるようにする(分断された器も覚醒させる)。
2.観測行為に伴い流入したエネルギーを、自らの意志に沿う形で行使できる。
1の能力は作中で「ウ・ドゥorゾハルとの親和性が高い」と表現される。アニマの反応者でなくとも、脳の一部分が特有の構造をしていれば親和性は高くなる(シオンの母やサクラ、人間だった頃のヴォイジャーの被害者)。このような人々は「ゾハルの民」と呼ばれる民族に多く見られ、脳波の波形がアニマの固有波動と部分的に一致する。ちなみにウヅキ兄妹の母親はゾハルの民の血を引いている。
反応者のリスク
1の能力を持っていると、ウ・ドゥにストーキングされる危険がある。このような人々が人並み以上に強い意志を持っていると、ウ・ドゥに話し掛けられる(観測される)ことがあるのだ。ウ・ドゥを無視したり(マーグリス他多数)さっさと逃げ出す人も多いが(Jr.やユーリエフ)、ウ・ドゥはさびしがり屋なうえ質問好きなので、うっかり返事をすると延々と付きまとわれてしまう。ただウ・ドゥは選り好みが激しいので、一度きりでぽいされる場合や(ヴォイジャー)、チラ見だけでスルーされる場合もある(教皇等多数)。
エネルギーの行使
上位領域にアニマを覚醒させた反応者の意志が伝達されると、それを感知した上位領域の監視者がゾハルを起動させ、ゾハルを介した観測行為を開始する。ここまでほとんどタイムラグは生じない。観測行為が始まると膨大なエネルギーが下位領域へと流入するが、反応者はそのエネルギーを自らの意志に沿う形で利用できる。これは器の場合も同様である。
ex.1 アニマと反応者
AD30年頃、イエスの使徒(反応者)がアニマを覚醒させて奇跡を起こす。使徒はイエスの教義をこの世界に具現させたいという意志を持っており、得られたエネルギーで奇跡を起こした。
ex.2 アニマの器と反応者
TC4768年にアニマの器を搭載した人型兵器E.S.を反応者たちが操縦している。彼らは兵器を操ることで目的を達成したいという意志を持っていたため、得られたエネルギーはE.S.の動力となった。
距離的制約
反応者とアニマ(器含む)が離れすぎていると、アニマは覚醒させられない。だがアニマ(器含む)とゾハルの間には距離的な制限がなく、アニマがどれだけ遠くにあっても固有波動さえ発してしまえばゾハルは即座に起動する。固有波動は集合的無意識に向けて発せられるので、距離的制約が生じないからである。ゾハルから流れ込むエネルギーとは虚数領域を伝播する観測用波動のことなので、意志を発信したアニマ反応者は流れ込む力をリアルタイムで使用できる。
散逸の力 / Xenosaga
概要
アニマは攻略本の解説などで「散逸の力」と呼ばれることが多い。エントロピーを増大させる能力(整理整頓されたものを散らかす力)(BとC)はすべての事象を散逸させる力であるし、Aもアニマが固有波動を発することで、結果的に集合的無意識を拒絶する「散逸する意識」を生み出すからである(大規模な観測の場合)。
本項では物語内で重要な位置を占めるAについて解説する。
アニマが発する固有波動により人の意志が上位領域に伝達されると、上位領域の監視者は「またトラブル発生かよ」と下位領域の観測を開始する。だが観測行為は、下位領域に様々な弊害をもたらしてしまう。
そのひとつは、先に述べたエネルギーの流入である。過剰な観測行為は上下領域間のエネルギーバランスを崩し、度を越すとエネルギー流入による事象変移(無機物などの入れ替わり現象)を引き起こす。ただし後述する意識の散逸に比べれば、これはさほど問題ではない。
より重大な弊害は、過剰な観測行為によって集合的無意識からの意識の散逸が加速してしまうことである。これは鶏が先か卵が先か的な矛盾もあるので、そのあたりは軽く流しながら以下を読んでほしい。
意志の伝達と観測行為
観測行為は、意志の発信者を詳しく調べトラブルに対処するために行われる。トラブルとは散逸する意識の発生であり、これは下位領域を崩壊に近付ける自殺行為であると同時に、監視者たちの存在する上位領域や宇宙集合体に悪影響を及ぼす危険も孕んでいる。ここで意志の伝達をトラブルに例えているのはそのためだ。
トラブルに対処する役目を担う監視者は、なぜ下位領域の意識たちが散逸するのか原因を調査し、これ以上意識の散逸が起きないよう、再発防止策を講じるために観測を行う。
しかし意志の伝達が行われた時点では、散逸する意識は発生していない。トラブルの原因調査、つまり観測行為が、散逸する意識を発生させてしまうのである(ただし大規模な観測行為の場合のみ)。
これでは本末転倒だが、おそらくこの仕組みは、監視者がリスクマネージメントを正しく行うことを前提に作られているのだろう。つまり観測行為で生じるリスクと、トラブルを放置したままのリスクとを比較し、再発防止策を講じる方が後者よりリスクが小さいと判断した場合にのみ観測を行うのだ。これならば、一方的に意識が散逸し続けて問題は永遠に解決しない、といった悪循環は避けられる。
だが、ウ・ドゥはリスクマネージメントをまったく行っていない。彼は監視者としてはあるまじきことに、下位領域への興味だけで行動しているので、意志の伝達が起きるとほぼ100%観測を行う。どうして意識を散逸させるような真似をするのか、何を考えその意志を持つに至ったのか、意志の発信者(伝達者であるアニマではない)に波動を通じて執拗に問いかける。そして聞くだけ聞いて対策は立てない。
上位領域にとって意志の伝達は意識の散逸に繋がる危険な行為だが、下位領域の住人にしてみればまったく与り知らぬことであり、意識を散逸させようとしたのではなく、普通に意志を持っただけである。それなのにいきなり、なにやら恐ろしげな存在*1から直接頭の中に問いかけられ、意味の分からない質問を繰り返される。しかもその際、ウ・ドゥは集合的無意識内に存在している発信者の意識に問いかけてくる。監視者は集合的無意識の特性をよく知っているので、より正確に相手の考えを理解するため、敢えて意識が剥き出しとなっている集合的無意識内で観測という名の面接を行うからだ*2。その結果、隠しておきたい本音や他人には言えない過去、失敗経験など、面接を受けた者のすべてが面接官に筒抜けになってしまう。
観測行為と意識の散逸
集合的無意識内での面接は、こちらの心の中が駄々漏れになるだけでなく、相手の心の中も駄々漏れになる。だが別次元の存在であるウ・ドゥの考えていることの大半は、人間には理解できない。文化的背景など様々なものが、あまりにも違いすぎるからである。
かろうじて「このままだと自分たちの宇宙が崩壊するか、面接官の裁量で消去される」ことだけは理解できるが、いきなりこんなことを知らされたら人間は普通は驚く。驚いて恐怖する。あまりに恐怖しすぎて「そんな運命は嫌だ、そんな世界は嫌だ!」と思うと、面接を受けた側の意識は世界を拒絶する「散逸する意識」となる。
幸い、アニマが伝達するほど強い意志を持つような人間、いわゆるアニマ反応者は、即座に世界を拒絶するような真似はしない。だが意志がよほど強くないと意識波動の変調を来し、発狂したり、シオンの母のように昏睡状態に陥ってしまう。ちなみに拒絶するとグノーシスになる。
観測行為がアニマ反応者だけに対する面接だけで済むならば、あまり問題にはならない。だが集合的無意識では意志の発信者だけでなく、他にも膨大な数の意識がぴったりと接した状態で存在しており、その意識は無防備に晒されている。そのため発信者だけを観測しようとしても、観測の過程で監視者や発信者の近くに漂っている無数の意識たちに、観測用波動がダイレクトに伝わってしまうのである。
ついでに言えば、大規模観測時のウ・ドゥの波動は、人間の意識波動よりも桁違いに強い。人間の意識波動の強さが蟻の足音とすれば、ウ・ドゥの波動は至近距離で聞くジェット戦闘機の離陸音(ターボジェット&アフターバーナー使用)である。耳栓や防音設備でどうにかなるレベルではない。絶対に逃げられないのである(Jr.談)。
だが観測行為は、常に他の意識を巻き込むものではない。トラブルの規模、つまり伝達された意志の強弱で観測の規模は変化するからだ。
伝達された意志が弱ければ(あるいはウ・ドゥの興味をさほど引かなければ)観測用波動は微弱なものとなり、ターゲット(意志の発信者=アニマ反応者)だけに届くので、巻き添えを食う意識はほぼ発生せず、意識の散逸もまず起こらない。E.S.戦で反応者がアニマの器をガンガン覚醒させ、自分の意志をガンガン伝達させても、グノーシス現象や事象変移が起きないのはそのためである。逆に伝達された意志が非常に強ければ(あるいはウ・ドゥの強い興味を引けば)観測用波動は強力になり、事象変移を招いて巻き添えを食う意識が多発する危険が高くなる。
大規模な(過剰な)観測行為
大規模な観測行為とは、人がすし詰め状態のコミケ会場(集合的無意識)に監視者が巨大モニター搭載の街宣車で乗りつけ、「お前のせいでいずれこの宇宙は崩壊か消滅どっちかするんだけど、なんでそんなことするの? しまいにゃーこうなっちゃうよ!」とボリューム最大のコンサート用スピーカーでガンガンに怒鳴りつつグロ画像を映しながらアニマ反応者=意志の発信者に近付いていくようなものである。
監視者の声を否応なしに聞かされ、自分たちの宇宙が崩壊するイメージ映像を強制的に見せられたコミケ参加者=集合的無意識内の意識たちは、いきなり衝撃の事実を突き付けられて混乱し、恐怖する。そしてそこから逃れようとする(ウ・ドゥ自身が怖くて逃げる意識もある)。また、大半の意識は恐怖に耐えきれずに消滅する。
いずれ世界が崩壊するという現実を拒絶したい、崩壊する世界を拒絶したい、そこから逃げたいという意志を持った意識たちは、拒絶の意志のみを持つ「散逸する意識」となり、集合的無意識から一斉に逸脱していく。その結果、大量の「散逸する意識」を発生させ、集合的無意識の崩壊=下位領域宇宙の崩壊を一気に推し進めてしまう。
アニマやアニマの器が固有波動を発すると、観測行為が起きる。そして観測行為は意識の散逸を加速する。入口と出口だけを見れば「アニマが能力を発揮すると意識の散逸が起きる(大規模観測の場合)」となるため、アニマは「散逸の力」と呼ばれるのである。
一般人とアニマ反応者の違い
生きている人間の意識波動が観測用波動と接触した場合、実数領域側の人間の大半は、意識という自らの半身が消滅してしまうため白化して死亡する。消滅せず拒絶の意志を持ち、散逸する意識となってしまった場合は、入れ替わり現象を起こしグノーシス化する(見かけ上のグノーシス現象)。死んでいる人間の意識波動は消滅するか、散逸する意識となって実数領域に逸脱しグノーシスとなる(狭義のグノーシス現象)。
このように観測行為によって生じたグノーシスの意識波動は、観測に使われた波動、つまりウ・ドゥの波動の影響を受けているため、波形の一部にその痕跡を残す。先天性グノーシスと観測行為由来の後天性グノーシスは、このウ・ドゥの波形の有無を調べることで鑑別が可能である*3。
先にも述べた通り、アニマ反応者はいきなり死亡したりグノーシス化したりはしない。それは意志がべらぼうに強いため、ちょっとやそっとの恐怖を植え付けられても気にしないからだ(自己主張が強過ぎて監視者の問いかけに耳を貸さないだけかもしれない。特にマーグリスとか。兄さんはマイペースすぎて人の話をあまり聞かなさそうだし)。
だが脳の構造が特殊なだけで強い意志を持たない(反応者としての能力が低い)ゾハルの民や、監視者に強い興味を持たれて執拗に付きまとわれた者(シオン)は、微弱な観測用波動に晒されただけでも恐怖に耐えきれず体調不良を来したり、発狂したり、ひどくなると昏睡状態に陥り、やがて死亡する。
監視者は問いかけに応えてくれる相手に飢えているので、うっかり返事をすると延々と付きまとわれてしまうため、注意が必要である(シオンの場合はウ・ドゥに興味を持たれただけでなく、マリア覚醒時のKOS-MOSがウ・ドゥから得られる力で稼働していたため、症状が悪化した。詳細は後述する)。
補足
*1ウ・ドゥに面接された人々は上位領域や宇宙の仕組み、ウ・ドゥの正体などをまったく知らないが、ウ・ドゥが自分たちとは根源から異なる存在、しかもはるかに次元の高い、神のような存在であることは本能的に理解できる。そのため、ウ・ドゥに対し理解の及ばないものに対する恐怖だけでなく、神に対する畏れや恐怖に近い感情を抱くことになる。
*2生きている人間の意識は個を保っているが、それは「他人の意識に触れられない状態」というだけなので、虚数領域に存在する者からは自由にアクセスできる。だからウ・ドゥだけでなく、死亡して意識のみの存在となったアンドリューやヨアキム、ネピリム、テスタメントなどは、シオンの心の中(記憶や父親に対する怒り等)を読み取った上で、彼女の脳内に語りかけてきたのである。「誰にも話したことないのに何で知ってるの!?」とパニックになるのは当然といえば当然だろう。
虚数領域の意識体であるケイオスも仲間の心を読めるが、それを口に出すと人間関係が壊れてしまうので必要時以外は心を読まないし、心を読めることも隠している。
*3後述するネピリムの歌声装置とツァラトゥストラは、このウ・ドゥの波形を持つ観測行為由来後天性グノーシスを誘引・吸収する。